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今月のピンポイントアドバイス



歯科医療者に必要な教養教育


さあ、そうなりますと歯科医院で働く人に対する第二段階の賛辞は次のようになるのです。

 「さすが歯科医院で受付をやっているだけあって品格を感じるね」

 「さすが歯科医師だけあって気品と教養に溢れた受け答えをするね」

 ところが、残念ながら今の日本の社会の中では、歯科医院で働く人たちにこのような賛辞を送る風土は無きに等しいように思います。それどころかまったく逆の評価が定着しています。

 「所詮、歯科医院の受付なんだから(品格がなくても)仕方ないんじゃない」たまに素晴らしい受付の人がいても
 
 「素晴らしい応対だ!歯科医院の受付になんかしておくのはもったいないね」などとどちらに転んでも歯科医院のレベルは高まらない始末です。

 唯一『さすが』と言われるのが歯科医師だけです。しかしその『さすが』も決して芳しい使われ方ではありません。

 「さすが歯科医師だね。フェラーリに乗っているなんて」

 どうも“こっち系”の誉められ方になってしまうようです。

 いつまでもこんな評価の中に甘んじていてはいけません。教養と品格に溢れた組織に高めて行こうではありませんか。

 4月一杯ほど日本経済新聞に連載されていた、博報堂最高顧問・近藤道生氏の『私の履歴書』に、氏が敬愛してやまなかったお父上に関する記述が印象に残っています。

 氏の父君は九州帝大医学部を卒業、しばらく病院勤めをした後、小田原で近藤外科医院を開業します。1階が医院、2階が寮という造りで、10名ほどの看護婦が寮に住み込みながら働いていたのですが、彼女たちに対して毎朝毎晩院長自らが講義を行うほど従業員教育に熱心だったそうです。

 それも驚くべきことに外科や看護に関する専門実務教育ではなく、茶道、日本の古典文学、詩歌、漢籍といった畑違いの教養教育だったというのです。私はこれこそ医療者の矜持を示した話だと思いました。

 「患部を診るだけではなく人を見る」とはよく聞かれる言葉ですが、『人を見る』とは『人を知る』ことで、『人を知る』ためには古典を読み、詩歌を詠むことが不可欠であることをこの偉大な外科医は知っていたのだと思います。

 最近は『人を知る』ために心理学めいた勉強をしたり、安直なハウツー系の書物を読んだりする傾向が強いように思いますが、それらはどこかお手軽過ぎていて底が浅いと感じていました。それだけにこの逸話には心が動きました。

 近藤医師の基本的な考え方は「看護婦は修養を積んでから患者に接すべし」だったといいますが、その前に「医療者たるものかくあるべし」を自らに課し修養を積むという率先垂範を実行してみせたのです。実に見上げた医療人ではないでしょうか。

 『二極化時代の始まり』と言われて十余年。時代は再び動き出したかに見えます。これからの時代に求められる歯科医院とはどのようなもので、その経営理念はいかにあるべきか。マネジメントスキルとしての個別具体的なシステムや手法はさて置き、その核心は、教養と品格にあると確信しています。

(Management Club Report 2009.4月号から抜粋しました)
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